リチウムイオン電池の特徴と仕組み

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リチウムイオン電池の概要

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リチウムイオン電池は、正極にリチウム金属酸化物、負極に炭素を用いた電池で、小型軽量かつ、メモリー効果による悪影響がない高性能電池のひとつである。鉛蓄電池やニッケルカドミウム電池のように、環境負荷の大きな材料を用いていないのも利点のひとつである。

正極のリチウム金属化合物と、負極の炭素をセパレーターを介して積層し、電解質を充填した構造となっており、他の電池と比較して「高電圧を維持できる」という利点がある。

リチウムイオン電池はリチウム電池と違い、使い捨てではなく充電ができる電池であるため「リチウムイオン二次電池」とも呼ばれる。一般的に「リチウム電池」と呼ぶ場合は、一次電池である充電ができない使い捨ての電池を示す。

リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、容易に高電圧を得られるため、携帯電話やスマートフォン、ノートパソコンの内蔵電池として多用されている。リチウムイオン電池の定格電圧は3.6V程度であり、小型ながら乾電池と比べて大容量かつ長寿命のため、携帯電話やスマートフォン、ノートPCといった持ち運びを行う電気機器の搭載バッテリーとして広く使用されている。

リチウムイオン電池は、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池に見られる「メモリー効果」が発生しないため、頻繁な充放電の繰り返しや、満充電に近い状態での充電が多くなりがちな、携帯電話やノートパソコンといったモバイル機器の電源として適している。

リチウムイオン電池の特徴

定格電圧3.7V、満充電状態で約4.2V、終止電圧で2.8Vが電池の電圧特性である。充電のサイクル回数は500回程度であり、保存による自己放電量も少ない高性能な電池として普及している。

リチウムイオン電池の場合、500回の充電サイクル回数を繰り返した時点で、電池容量が60%程度まで減少するとされている。携帯電話やスマートフォンで「100%まで充電をしてもすぐに電池がなくなる」という事象がよく見られるが、電池そのものが古くなり劣化が進んでいるのが原因であり、新品の電池に交換するのが良い。

携帯電話やスマートフォンに搭載されたリチウムイオン電池の場合「毎日就寝前に充電し、翌朝100%となっている」という使い方であれば、「1年半」程度の使用で電池容量は60%程度まで減少するであろう。

メモリー効果

メモリー効果とは、電池に充電された電力を使い切らないうちに何度も浅い充電を繰り返すことで、「最大容量が小さく記録」される現象が発生し、電池の見掛け容量が小さくなることである。

ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池はメモリー効果の影響が大きく、過放電にならない程度に放電を行う使い方が推奨されている。

リチウムイオン電池にはメモリー効果が見られず、電池を使い切らずに繰り返し充電しても電池に悪影響を及ぼさないという利点がある。かつ、充電回数も多く、急速充電特性も良好なため、従前の二次電池と比較して多くの利点がある。

リチウムイオン電池はメモリー効果がないことから、携帯電話やスマートフォンを常に充電したままにしても、充電特性に悪影響はない。しかし、メモリー効果による充電量の低減はなくとも、常時満充電による高温状態が継続していると、熱による劣化が進行してしまい、リチウムイオン電池の使用環境としては極めて過酷となり、寿命低下を引き起こすおそれがある。

リチウムイオン電池を長持ちさせる方法

リチウムイオン電池は長寿命かつ大出力という利点がある高性能な電池だが、使い方によって寿命が短くなる。代表的な「寿命低下」の原因を紹介する。

満充電の継続による電池性能の劣化

携帯電話やスマートフォンを新規購入した場合、電池残量はほとんど切れる寸前か、多くとも半分程度の状態で販売される。電池を長時間保存する場合、満充電状態が継続していると寿命が短くなるため、充電量を抑えた状態で販売している。

電池が完全に放電すると致命的な損傷を与えるため、長期間に渡って購入されず充電されないことがあっても、完全放電を避けるため半分程度の充電は確保されている。

満充電状態での保存は、リチウムイオン電池の劣化を早める原因となる。購入前はユーザーの知るところではないが、使用開始後であっても「満充電となっている期間を短く」という使い方ができれば、同じ電池をより長期間に渡って使用できる。

電池を長期間使用していない場合だけでなく、リチウムイオン電池を使用している際も同様である。常に充電器にコンセントを接続した状態にするなど、浅い充電を繰り返しての満充電状態が継続すると、電池の寿命に悪影響を及ぼす。

携帯電話は頻繁に持ち歩く機会があるため、常に満充電にしておきたいものである。電池を持たせたいことを理由に、満充電とせずに使用して利便性を損なうのは望ましいことではない。携帯電話やスマートフォンでの利用にあっては、定期的な電池パックの交換を行って対応するのが通例となっている。

満充電を継続する使用方法は、リチウムイオン電池の特性上推奨されない。

携帯電話やスマートフォン、ノートPCなど、毎日の持ち運びを前提としている電気機器は、満充電時間を継続すると電池性能が劣化する。モバイル機器のユーザーは使用中の電池切れを防ぐため「いつも完全充電の状態で使用する」というのが通例となっている。

電源プラグが接続された状態では、ほぼ満充電に近い状態がキープされる。電池の充電システムにおいては、過剰に充電されないように保護装置を搭載している。充電100%となっては充電状態を解除し、自然放電で95%前後となっては再度微弱電流で充電するといった「電池にやさしい」充電制御で設計されている。

高温環境での利用・保管による劣化

リチウムイオン電池は周囲温度25℃を基準にしている。持ち運びを前提としている電気機器に搭載されたリチウムイオン電池は、熱せられた自動車内、入浴中の利用、直射日光にさらされる場所への放置など、過酷な温度環境に晒されることも珍しくなく、温度上昇による寿命の劣化が懸念される。

リチウムイオン電池の最高許容周囲温度は「45℃」と規定されている。日本国内の一般的な環境であれば45℃以上の周囲温度になることは考えられないが、直射日光の当たる自動車内への放置、入浴中の利用を想定すると、45℃を超過した危険温度になり得る。

電池の温度上昇は寿命の低下だけでなく、本体の電子回路や内部配線の絶縁劣化を引き起こす原因となり、異常発熱による発煙や発火、本体の変形などの不具合につながる。

高温条件では電池は著しい性能劣化を引き起こす。これらの影響により一般的に「500回」といわれる充電サイクル回数に至る前に、電池が寿命となる事例も多い。保管方法と利用環境には十分な注意が必要である。

過放電による電池性能の劣化

電池は過放電に弱い。電池の残量がなくなると、それ以上の放電を避けるため「残量0%」といった表示をして電気機器を停止させる。放電した電池を継続利用すると、最低限必要な電圧を下回る「深放電状態」となり、セルの劣化が著しく進行し回復不能となる。

過剰に放電された電池は破損状態となり再度充電するのは難しい。利用不能となるので、放電のし過ぎに注意が必要である。

最低電圧が2.8V程度となった時点で、電池の放電を停止するよう保護装置が組み込まれており、通常の使い方であれば過放電状態にはならない。放電された状態で長期間放置しての自然放電や、組み合わせ電池の一部セルが過放電となる事例があるが、過放電状態となったセルは再充電が不能となり、システム全体の電池容量が低下したり、異常発熱や発火につながるおそれがある。

リチウムイオン電池の保護回路による発火防止

リチウムイオン電池は電力密度が高く、過充電や過放電、短絡の異常発熱により発火・発煙が発生し火災につながる。過充電を防ぐために、電池の充電が完了した際に充電を停止する安全装置や、放電し過ぎないよう放電を停止する安全装置が組み込まれている。

電池の短絡保護

電池パックの端子間がショート(短絡)した場合、短絡電流と呼ばれる大きな電流が発生する。電池のプラス極とマイナス極を導体で接続した状態では、急激に発熱してセルを破壊し、破裂や発火の事故につながる。

短絡電流が継続して発生しないよう、電池には安全装置が組み込まれている。短絡すると大電流が流れるため、電流を検出して安全装置が働くよう設計される。短絡による大電流は即時遮断が原則であり、短絡発生の瞬間に回路を切り離す。

過充電の保護

過充電の安全装置が組み込まれていなければ、100%まで充電された電池がさらに際限なく充電され、本来4.2V程度が満充電があるリチウムイオン電池が4.3、4.4Vと充電されてしまう。過剰な充電は発熱や発火の原因となる。

リチウムイオン電池の発火事故は充電中が多く、期待された安全装置が働かなかったり、複数組み合わされたセルの電圧がアンバランスを起こし、一部セルが異常電圧になる事例もある。セル個々で過電圧保護ほ図るのが望ましい。

過放電の保護

過放電停止の保護回路は、電子回路によってセルの電圧を計測し、電圧が一定値以下となった場合に放電を停止する。

過放電状態に近くなり安全装置が働いた電池は、過放電を避けるため「一定以上まで充電されないと安全装置を解除しない」という安全性重視の設計となっている。

モバイル端末において、電池を0%まで使い切ってしまった場合に12時間以上充電しなければ再起動できない、といった制御が組み込まれているのはこれが理由である。電圧は2.8Vを最低電圧としているのは、これ以上電圧が低下すると深放電状態となり、セルの回復不能な損傷を懸念するためである。

一部のスマートフォンやタブレットPCでは、過剰に放電を行った場合に24時間もの長時間に渡って連続充電し、電圧を一定値以上まで高めない限り復帰しないといった安全装置を組み込んでいる事例がある。

建築産業・自動車分野のリチウムイオン電池利用

建築産業や自動車分野でもリチウムイオン蓄電池は広く活用されている。無停電電源装置や防災用蓄電池、電気自動車のバッテリーなど、小さな容積で大きな電気容量を貯め込める特性を活かし、幅広く普及している。

無停電電源装置としての活用

高い電力密度と、長時間に渡る安定した高電圧出力機能を活かし、産業用の無停電電源装置や防災用蓄電池の電源としてリチウムイオン電池が活用されている。

リチウムイオン電池は電力密度が高いため、同一の鉛蓄電池やアルカリ蓄電池を用いた無停電電源装置との比較でも、機器の小型化や軽量化を図れるのが大きな利点である。

蓄電池スペースを小さく抑えられるため、限られたスペースの有効利用が求められる建築計画に対して優位性が高い。天井裏取付や壁掛け取付が可能な電池もあり、従来の鉛蓄電池では不可能だった設置方法も選択できる。より合理的なスペース利用が図れる。

鉛蓄電池を用いたUPSは寿命2~3年と非常に短く、交換周期も頻繁となる。リチウムイオン電池のUPSでは電池の交換周期を約2~4倍の「8年」まで延長できるため、運用コストが低減できる。

電池の交換作業中はUPSの機能が失われる。交換頻度が少なければ、UPSの停止時間の短縮につながり、より信頼性の高い電源環境が構築できる。

電池交換中に事故が発生するとUPS機能が働かず、極めて大きな損害を被るため、バイパス回路の構築や複数台のUPSを用いた冗長性の確保が行われている。

電気自動車での活用

リチウムイオン電池は、電気自動車やPHEVに搭載されている。携帯電話やスマートフォンに用いられている小規模の電池と違い、20~30[kWh]以上の電源容量を持ち、自動車の大型モーターを駆動できる大きな出力を持つ。

電気自動車に搭載されている電池を家庭用電源として利用する取り組みが進められている。電気自動車の電池から出力される電源は直流であり自動車のモーター駆動には都合が良いが、家庭用の電源として直流をそのまま使えない。

電気自動車の電池を家庭用電源として使うには「Vehicle to Home」と呼ばれる仕組みを用い、DC500Vという車両用の電源わ、直流電源を単相交流の200/100Vに変換しなければならない。

電気自動車の電源を家庭用電源に変換する装置は、ニチコンの「EVパワー・ステーション」が代表的である。リーフを接続しておけば、電力のピークシフトにも活用でき、深夜電力の有効活用にもつながる。

単相交流に変換された電力を家庭用の分電盤に接続すれば、停電時にも電気自動車から電力供給できる。電気自動車を蓄電池として用いることで、災害時の非常電源としての活用が期待でき、防災備蓄電源を常備するのと同様の信頼性が得られる。

日産が販売しているリーフは約24[kWh]の蓄電池容量があり、今後の新車種ではさらに電池容量を高め航続距離を伸ばすことを検討している。一般的な家庭であれば、月あたり300[kWh]が平均消費電力量であり、換算すると1日あたりの10[kWh]ほどの電力を消費している。

24[kWh]まで満充電した電気自動車があれば、日常と同じ電力の使い方であっても、2日間以上の電力を得られる。

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