業務放送・非常放送設備の計画と設置基準

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放送設備の使用場所と概要

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建物における放送設備は、会議室等で使用する拡声設備、イベント会場やホールで使用する音響設備、館内放送設備、非常放送設備などの用途に分けられます。電気設備設計の分野で計画するのは、館内放送として使用する業務放送設備か、非常放送専用の放送設備が多く、PAなどの個別設備は専門業への委託や別途工事も多く、設計機会は非常放送設備よりも少ないと言えます。

PAシステムは、パブリックアドレス( Public Address )の略称で、マイクとスピーカーを別の空間に置き、公衆に対して広く音声や音響を届けることが主目的となります。対して、マイクとスピーカーを同じ空間に設置する会議システムのような使用方法は、SR( Sound Reinforcement )と呼ばれます。

PAシステムは、小さなイベント会場で使用するような、可搬の小型システムから、大規模施設から街区をカバーするような大規模システムまで広く使われています。マイクと音源ソースのミキシング、アンプによる出力調整、スピーカー回線選択、個々のスピーカー音量調整など、高度な制御による信頼性の高さが要求されます。

会議用やイベント音響用など、高音質の放送システムを構築する場合、ローインピーダンスのシステムを選定します。ローインピーダンスのシステムとした場合、配線が太くなり、スピーカーも高価で、多数のスピーカを接続できないのが特徴です。

館内放送や非常放送など、低位または中位の放送品質を保ちつつ、多数のスピーカーを設置していく放送システムを構築する場合は、ハイインピーダンスのシステムとします。ハイインピーダンスの放送システムとした場合、1.2mm程度の細い電線に、スピーカーを何十台も並列に接続することが可能です。

放送設備は、壁掛けの一体型のものや、自立ラックに収容するものなど、いくつかのラインナップがあります。近年ではデジタルアンプが普及し始めており、従来のアナログアンプと比べて、非常にコンパクトな寸法となっています。よって従前のシステムと比較し、ラックにアンプを多数詰め込むことが可能になるため、ラックのコスト削減や、省スペース化を図ることが可能になります。デジタルアンプの消防認定の取得も進んでいるため、非常放送用のアンプとして採用することも可能になりました。

放送設備の構成機器

増幅器(アンプ)

アンプは、CDプレーヤーやマイクなど、外部からの信号を忠実に増幅するための機器です。10Wから50W程度のアンプは、可搬型として持ち運んで使用できるものが多数販売されています。60Wを超えるアンプになると、持ち運ぶには大き過ぎるサイズとなるため、据付・固定して使用することが基本となります。

マトリクスユニットを内蔵しており、多元放送を行えます。例えば商業施設などの場合、売場では案内放送、共用通路やエレベータホールではBGMというように、ひとつのシステムで多数の違う放送を流すことが可能です。

放送の優先順位を設定することも可能で、BGMなどの放送を最も優先順位を低くし、マイクロホンによる放送などの順位を高く設定すれば、割り込み放送を行うことも簡単です。

一般的に、5W以下が携帯型、10W~60Wが可搬型、60Wを超えるものは据置型として選定、運用されています。これらは設置方法により、卓上型・ラック型・デスク型に分類されています。

スピーカー

スピーカーによって、アンプで増幅された電気信号を音に変換します。スピーカーは大きくコーン型、ホーン型に分類され、コーン型スピーカーは特に音質を重視する場所に使用され、ホーン型は駐車場、学校のグラウンドなど特に大出力を必要とする場所に使用されています。

放送設備を設置する環境に合わせて、屋内型・防滴型・防水型・防爆型などのラインナップがあります。例えば、軒下などにスピーカーを設置したい場合、防滴型のスピーカーを選定します。屋上駐車場など、雨が直接掛かる場所では防水型のスピーカーを選定します。

スピーカーを設置する場所として、爆発性のあるガスが発生するおそれのある所では、防爆型のスピーカーを選定します。それぞれ、設置場所に合わせて機種選定することが重要です。

マイクロホン

マイクロホンは、音を電気信号に変換するための機器で、単に「マイク」と呼ぶこともあります。マイクロホンで変換した電気信号をアンプに伝送し、増幅されてスピーカーに伝送され、音として再度変換されて、スピーカーから音が出るというのが一連の流れになります。

放送設備の音源装置

ミュージックマシン・ボイスファイル・プログラムチャイム

ミュージックマシンなどが一体となっている放送設備であれば、チャイムや音楽を流すことが可能ですが、自立ラックに機器を個別に組み込む場合、アンプとスピーカー、マイクだけでは、自動放送や業務放送、チャイムなどを流すことが出来ません。ミュージックマシンやボイスデータファイル、プログラムチャイムを組み込み、それぞれの機器の機能を用いて、複合的な運用を行うことになります。

例えば、ミュージックマシンはカセットやMD、CDが従来から使用されている音源ですが、長時間音楽を流し続けることから、回転駆動系の機器ではなく、メモリーカードなどを使用したデジタル再生が最近の主流です。カセットやMDは、新規の放送設備を構築する場合ほとんど採用されず、CDやDVD、メモリーカードの採用が一般的です。

ボイスファイルは、商業施設の開店閉店音声、向上などでは始業終業の案内などを行うことができます。音声に関連するファイルが登録された機器です。

プログラムチャイムは、チャイムに関する制御を主に行う機器です。始業チャイムや案内放送チャイム、不審者侵入時の警告アラームなども、この機器に集約できます。このような多用な機器を放送設備に組み込み、建物の用途に合わせて機器選定・運用をすることになります。

放送設備設計の概要

建物用途と消防法適用の確認

放送設備を設置する対象の建物が、防火対象物の何項に該当するかを確認します。例えば、事務所なら消防法上は15項という防火対象物に分類されます。建物用途によって、非常放送が必要になる面積が違いますので注意しましょう。

非常放送設備を設置する判断が付かない場合は、消防協議を行います。防火対象物の用途と、面積を照らし合わせて非常放送設備が必要かどうかを確認します。

建物用途の確認

非常放送のみの放送設備を構築するのか、業務放送を兼用し、館内放送・BGMなどを使用するのか、施主要望を確認します。どのようなグレードの放送を行うかによって、選定する機種が変わってきます。

スピーカーの配置計画

非常放送設備としての用途であれば、スピーカーを設置した部分から半径10mの円が包含するように、配置計画をします。BGMや館内放送を兼用する放送設備であれば、音の明瞭性を考慮して、半径5mの円が包含するように配置をすると、明瞭性が向上します。ただし、スピーカーの台数が多くなるほど、設置コストが増大しますし、アンプのサイズが大きくなりがちですので、綿密な設計が必要になります。

スピーカーは、設置場所によって防水性能や防爆性能などを向上させた製品があります。屋外に放送を流す必要がある場合は、防水・防湿性能のあるスピーカーを選定しなければいけません。他にも、工場などに放送設備を設置する場合、防爆型スピーカーを採用しなければならないこともあります。これは前述した通りです。

スピーカーの設置場所の音の反響によって、音質が変わるため注意が必要です。自走式立体駐車場など、天井が低くて面の広い大空間に放送設備を計画する場合などでは、スピーカーからの音が天井や床など反射して、聞き取りにくいことがあります。

スピーカーの台数を減らして大音量にする方法を採用していると、その傾向がさらに大きくなりますので、個々のスピーカーから発する音量を小さめにし、台数を増やすなどの工夫が必要になります。

スピーカーの仕様

スピーカー本体のパネル面には、アルミパンチングやジャージネットなどを張っている製品があります。天井の色とスピーカーパネル色を合わせたいという要望が出ることがありますので、施主への確認を十分に行います。

スピーカーの台数を計画すれば、アンプの容量を詳細に決めれます。スピーカー結線方法によって入力ワット数が変わりますので、結線方法も考えながら、アンプの総容量を決定します。館内放送で使用するスピーカーはハイインピーダンスのシステムなので、多数のスピーカーを並列に接続することが可能です。

放送設備の回路構成

放送設備を計画する場合、アンプの分けや回線の接続方法に特に注意が必要です。例えば事務所において、執務スペースを個別にし、廊下、トイレなどと放送回路を分離します。廊下やトイレが共用スペースの場合、来客者などのためにBGMを流すことが考えられ、執務スペースは原則無音状態とすると思われます。居室によって、放送する内容放送がちがうため、放送区域を同一にするのは、望ましくないと言えます。

他にも、商業施設においてはバックヤード、客用通路、店舗内等を同一にすることは望ましくありません。バックヤードは従業員だけが必要とする放送を流す系統であり、客用通路は案内放送やBGMなどを流す必要があるため、放送する相手も内容も違うため、室の用途を理解し、回線分けを行うのが重要です。

ワイヤレスマイクロホン

マイクを有線で接続せず、電波や赤外線、光などに情報信号を乗せて通信し、放送を行う方式です。それぞれ特徴があります。

赤外線方式

赤外線方式は、FM変調した音声信号を赤外線で伝送する方式です。直進性が強く指向性が狭く、物体を透過せず回り込みがないことから、放送区画外への情報漏洩の可能性が少ないという利点があります。しかし、センサーが多数必要になる欠点があります。

電波方式

電波方式は、FM変調した音声信号を800MHz帯域の電波として伝送する方式です。電波は球体状に広がるため回り込みによる受信が期待でき、障害物があっても通信可能です。金属は電波を完全反射しますが、ALCや石膏ボード、木材などは減衰するものの透過しますので、放送区域外への情報漏洩が懸念されます。

ワイヤレスマイクロホン方式では、ワイヤレスマイク、ワイヤレスアンテナ、ワイヤレスチューナーで構成し、マイクからアンテナまでは無線方式となり、アンテナからチューナーまでは有線方式となります。チューナーは受信した電波を取り出しアンプに送信します。

ワイヤレスチューナーを同一エリアで複数使用する場合は、周波数は0.25MHz以上の間隔を開けて設定します。設定により、同一エリアで最大30チャンネルを使用することが可能です。

近くに同一の方式で動作するワイヤレスチューナーを運用していた場合、電波が混信しますので、チャンネル番号が重ならないか確認剃る必要があります。最近では、256チャンネルを選択できるデジタルワイヤレスチューナーが開発され、電波の混信が発生しないような改善がなされた製品も生産・販売されています。

電波法により、800MHz帯域の電波がワイヤレスマイクロホンに割り当てられています。陸上移動無線局の免許が必要な「A型」、免許不要の特定小電力無線局となる音声・楽曲用音響システムの「B型」、特定用途の音声拡声に用いる300MHzの「C型」、劇場やホールの音声ガイドに使用する70MHzの「D型」があり、用途毎に使い分けがなされています。

非常放送設備とは

小規模建築物でも、不特定多数が出入りする「百貨店」「福祉施設」等では、収容人員が20人を超えると、非常警報器具の設置義務が発生します。常に騒音の発生するおそれがある「スタジオ」といった建築物も、同様に非常警報設備の設置が必要になります。非常警報器具は、携帯拡声器や手動サイレンなど、比較的簡易な器具で良いことになっています。

しかし、不特定多数が集まる商業施設や宿泊施設などでは、ベルやサイレンを突然鳴動する警報方式では、大音響によるパニックが発生する可能性があります。避難中の二次災害などの原因となるため、感知器の発報を確認するという緩和放送の後、火災発生を知らせる放送を鳴動させる二段式の警報方式が採用されています。

非常ベル・サイレンの計画

旅館や病院では、収容人員が20人を超えると、非常警報設備が必要になります。非常べルやサイレンなどを設置し、火災を速やかに知らせられるようにします。非常ベルや自動サイレンなどが必要になり、手動式器具は使用できません。

非常ベルは、25mの半径の円で包含出来るように配置します。自動火災報知設備などで設置するベルがある場合は、その有効範囲において、非常警報設備と同様であるとされ、非常ベルを免除できます。

非常ベルやサイレンは、1m離れた場所で90デシベル以上の音響を出すように義務付けられています。しかし、カラオケボックスやスタジオなど、周辺に90デシベルに近いような大音響が常時発生しているような場合、ベルの音が聞こえません。このような場合は、カットリレーを設け、火災信号で非常警報以外の音響を停止させるなどの措置が必要になります。

非常警報設備における非常放送

非常警報設備における非常放送は、昭和44年3月の消防法施行規則改正により、基準が定められました。従来の非常警報設備は「サイレン警報」によるもので、自動火災報知設備による連動により、「火災がどこかで発生していると思われる」という意味合いの警報しか流すことができませんでした。

特に大規模な施設でも、サイレンが一斉に鳴動するのみであり、非火災か火災かわからないまま避難を強いられ、避難誘導のベル音やサイレン音は、特に大規模施設ではパニックの元になるため、火災警報による避難時の二次災害につながるおそれがあります。

放送設備が設置されていたとしても、自動で放送できない設備では、火災が発生した場所を的確に把握し、避難放送を流すのは経験・技術が必要です。どの階で火災が発生し、避難しなければならない火災なのかを的確に把握し、避難を促すには高度な技術と経験が不可欠です。

こうして、従来「サイレン」による非常警報であったものを「音声放送」に変更し、「何回のどのエリアで発報したか」「避難すべきか、非火災か」という内容が明確に把握できるようになり、パニックとならないよう考慮された設備となっています。

非常放送設備の設置基準と計画

建築物への収容人員が数百人を超えるような大規模建築物では、非常ベルやサイレンが突然大音量で流れると、パニックを起こす可能性があります。このような建築物では、音声による火災警報を行うための、非常放送設備の設置を義務付けられます。

非常放送設備は、緊急放送を明瞭に聴視するため全区域にスピーカー配置します。スピーカーは10mの範囲で包含するように規定されており、この範囲を全区域が包含するように配置していきます。階段や傾斜などでは垂直距離15mにつき1個以上設置します。非常用のスピーカーを設置した場所には、ベルやサイレンを設置しなくても良いという免除規定があります。

ひとつのスピーカーがカバーする範囲は半径10m以内ですが、隣接する小規模区画にそれぞれスピーカーを設置するのは合理的ではないため、以下の放送区域は、スピーカーの設置が免除されます。

  • 居室で6m2以下の放送区域
  • 居室から地上に通じる廊下、その他の通路で6m2以下の放送区域
  • 30m2以下の非居室(倉庫・便所・更衣室・機械室など)

非常放送設備におけるスピーカーは、L級、M級、S級に分けられており、それぞれ音圧が違っています。L級はもっとも大音量を発生させられるスピーカーで、100m2以上の範囲に非常放送を周知できます。M級は50m2を超え100m2以下、S級は50m2以下の放送区域を持っており、設置する部屋の大きさに合わせて機種を選定します。

スピーカーの出力音圧は、無響室で測定し「音声警報第2シグナル」を放送したときに、軸上1mで最大値がそれぞれ、S級は84dB以上87dB未満、M級は87dB以上92dB未満、L級は92dB以上と定められています。騒音計はA特性で測定します。

非常放送設備として使用するスピーカーは、消防認定を受けた製品を使用しなければいけません。認定を受けたスピーカーは耐熱性があり、80℃の空気中で30分間異常無く鳴動することが可能な性能を持っています。

非常用スピーカーの配線基準

非常放送用のスピーカーへの配線は、「絶縁性能0.1MΩ以上を確保」「同一の電線管の他の電線を収容しない」「アンプからスピーカまでのケーブルはHPケーブルなど耐熱性があること」などが求められます。火災時にケーブルが延焼し、非常放送が所定の場所に鳴動しないようなことになると、避難に支障をきたすためです。

「アッテネーター(音量調節器)を設ける場合は3線式配線とする」「スピーカーの配線を系統別単独とする」などの基準もあるため、配線設計には十分な検討が必要です。

放送系統の複線化

所轄消防の指導によっては、放送系統が延焼してしまった場合に放送区域が大きく喪失してしまわないよう、スピーカーへの配線を1個飛ばしとし、二重配線による複線化を求められることがあります。このような場合は、アンプから2系統の配線を敷設するの不経済なため、放送系統を分割するリレー(回路分割装置)を設け、端子盤点から2系統に分割する方法が良く採用されます。回路分割装置を使用する場合、放送系統は各階ごとに分割します。

放送設備の非常電源

警報設備としてのの放送設備は、非常電源を搭載し、停電時に火災が発生しても支障なく鳴動し、避難を促す機能が必要です。よって、消防法により「非常電源の容量は機器を10分以上作動できること」「常用電源が停電したときは、自動的に非常電源に切り替えられること」「常用電源が復旧しても、自動的に非常電源から常用電源に切り替えられること」などが定められています。

非常電源は通常、放送設備の主装置にニッケル・カドミウム電池などが内蔵されているのが普通です。火災時や避難訓練時などしか放電することがないため、トリクル充電により常に満充電が維持できるように設定されています。寿命は比較的短く、4年程度で交換が必要になります。定期点検で電池の寿命を確認し、火災時に「電池が無いので放送が鳴動しなかった」ということが無いよう、必要な定期点検を行いましょう。

電源遮断装置(カットリレー)

大音量で音楽などを流している場合、火災放送が流れても音を拾うことができません。火災放送が流れたときには自動的に放送を遮断し、火災放送だけを聞き取るための設備が必要になります。これは電源遮断装置、カットリレーと呼ばれます。カラオケボックスなど、大音量で音楽が流れる環境では特に重要で、火災放送が聞こえないようであれば被害が大きくなってしまいます。カットリレーの二次側から音響装置の電源を確保することが重要です。

カットリレーコンセントは、一般的な15Aコンセントよりも電源容量が小さく設定されており、8A~10Aの電流値で使用します。使用する音響装置のワット数が、カットリレーの許容するワット数を超えないよう選定します。容量を超える音響装置を接続すると、接点の融着や異常発熱が発生し、カットリレーからの発煙や発火、緊急時に正常な電源遮断ができないといった問題が発生しますので、接続には十分な注意が必要です。

カットリレーの詳細な解説については、カットリレーの仕組みと設置基準を参照下さい。

スピーカーの構造の違いと種類

放送設備用スピーカーとして、コーン型・ホーン型・ワイドホーン型の3種類が代表的です。

コーン型スピーカー

コーン型スピーカーは、周波数特性が広く、小出力から大出力まで幅広いラインナップのある、汎用性の高いスピーカーです。原則として屋内使用とし、水気のある場所には不向きです。

ホーン型スピーカー

コーン型よりも指向性が高く、大出力を得ることが出来るスピーカーです。防水・防湿性能があり、屋外で使用することが可能です。周波数特性が狭く、低音域から高音域を使用するようなBGM用途には不向きです。

ワイドホーン(ソフトホーン)型スピーカー

コーン型スピーカーをホーン形状のケーシングに収容したものです。ホーン型スピーカーよりも周波数特性が広く、屋外でのBGM用や大空間放送用として使用します。防水・防湿性能が高く、屋外で使用しても問題ありません。製品種類があまり多くないため、機器選定が制限される傾向にあります。

周波数特性は幅広い範囲で平坦であり、均一な音圧レベルを得ることが可能です。

スピーカーの配置方式の違いと特徴

スピーカーの配置は、放送を行う場所や用途に応じて、十分な音量と音圧分布が得られるように計画します。スピーカーの配置方式として、集中方式、分散方式、集中分散方式の3種類があります。

集中方式

スピーカーを一方向に集中して向け、音源の方向性を得る配置方式です。スピーカーからの距離や位置が変わると音質が悪化するため、コンサート会場や劇場など、定位置で音を聞く環境に適しています。

分散方式

全体を均一な音圧レベルにする方式で、どの場所にいても一定の音質を確保できる配置方式です。施設のBGM放送や一般業務放送に適しています。

集中分散方式

集中方式と分散方式を併用し、集中方式を基本にスピーカーを配置し、音圧レベルの低い場所に分散方式でスピーカーを補助配置する方法です。体育館やエントランスホールなどの放送に適しています。

マイクロホンの指向性の違いと特徴

集音するためのマイクロホンには、指向性の分類があります。感度方向の分類として、無指向性、単一指向性、超指向性、両指向性の4つに分類されます。マイクの性能として、感度と周波数特性があります。

マイク感度とは、マイクロホンに向けて一定の大きさの音を与えたとき、出力として取り出すことが出来る大きさを表示したものです。感度が良いマイクは小さな音でも収音することが可能ですが、感度が悪いマイクは、収音のために大きな音が必要になります。

周波数特性とは、今黒本に一定の大きさの低音(低周波)~高音(高周波)を与えたときに、出力に発生する電圧変化を示したものです。低周波から高周波まで、平坦であるのがもっとも望ましいですが、高温域が若干高い特性を示す場合が、もっとも使いやすいと言われます。

無指向性マイクロホン

周囲どの方向からの音に対しても、変わらない感度を持つマイクロホンです。周辺の音を偏りなく集音する場合に適合します。

単一指向性マイクロホン

正面方向に対する感度が高く、側面からの集音は正面方向の約半分、背面からの集音は10%程度となっているマイクロホンです。一方向からの集音性能が高いので、周囲雑音が高い場所でのハウリング防止に適しています。

超指向性マイクロホン

正面に対する感度が、単一指向性マイクロホンよりも高く、側面からの集音を0%としたマイクロホンです。残響や反響あるホールでも、支障なく集音できます。

両指向性マイクロホン

正面と背面の指向性が高く、ほぼ同等の感度を持っているマイクロホンです。側面感度は10%程度です。対談や講話など、両方向からの集音に適しています。

マイクロホンの方による違いと特徴

マイクロホンには、ダイナミック方式とコンデンサ方式の2種類があります。

ダイナミックマイクロホン

機械的振動に強く、破裂音などの大音響にも耐える性能を持ったマイクロホンです。会話における「吹かれ(パ行の発声)」にも明瞭です。温度や湿度による影響を受けにくく、本体の構造が丈夫で取扱いが容易なため、広く使用されています。周波数特性はコンデンサ方式に劣ります。

コンデンサマイクロホン

周波数特性が良く、繊細な音の集音に適したマイクロホンです。ピアノの収音などに向いています。内蔵するコンデンサの信号を増幅するためにトランジスタが内蔵されており、トランジスタを動作させるための電源が必要になります。周波数特性の良いマイクが、安価に作成できるという特徴がありますが、吹かれに弱く、破裂音で破損します。

ハウリングと原因

ハウリングとは、マイクとスピーカーが同じ空間にある場合で、スピーカの音がマイクに入り込むことによ再びスピーカーからマイク音が出、循環することです。増幅が繰り返されることで、単一周波数における最大出力の音が発声してしまい、キーンという大音量が流れます。

ハウリングは特に、スピーカーやマイクの指向性が広く、音を拾いやすい環境にあると発生しやすくなります。空間内における定在波の共鳴や、マイク・スピーカーの特性にピークがある場合にも発生しやすくなります。マイクとスピーカが別の部屋にあるのが原則のPAシステムでは、あまり発生することがなく、マイクとスピーカーが同じ部屋にあるSRシステムで、発生に注意が必要になります。

ハウリングを防止するためには、イコライザーによるハウリング周波数の低減(ハウリングサプレッサー)を行うのが効果的です。

ハイインピーダンスとローインピーダンスの違い

音響信号をスピーカーへ出力する場合、出力方式としてハイインピーダンス方式とローインピーダンス方式があります。

ハイインピーダンス方式

ハイインピーダンス方式は、1台のアンプに対してスピーカーを数十台から数百台接続できる配線方式です。アンプとスピーカーの距離が長い場合にも適しています。

アンプの出力電圧が、アンプ固有の定格出力値にかかわらず一定電圧 100Vrms となるように設計された方式で、同じ電力を送出するのに電流値が少なくて済むため、多数のスピーカーを接続することが可能になります。配線によるロスが少ないため長距離配線が可能で、接続台数の変更や結線方法の変更にも対応が容易です。

消防法に規定されている非常放送設備として運用する場合、ハイインピーダンス方式が義務付けられていますので、建築物の電気設備として運用する場合、多くがハイインピーダンス方式による放送設備を設置しています。

ハイインピーダンス方式は利点が多いですが、トランスを介して伝送するため再生帯域が狭くなり、音質が劣化するという欠点がありますので、高品位な音源ソースを流す場合には注意が必要です。カップリングトランスは、アンプのハイインピーダンス方式に適合させるもので、スピーカーの入力設定が決められます。

例えば天井埋込のコーンスピーカーでは、3W、1W、Cのタップがあり、3W出力で使用する場合は3WとC端子をスピーカーラインに接続します。1W出力の場合は1WとC端子を接続します。入力インピーダンスには、「3.3kΩ(3W)」といった表記がされていますので、必要な設定に応じた接続を行います。

ローインピーダンス方式

帯域が広く、高品位な再生に適した方式です。1台のアンプにスピーカーを1台~2台、または4台程度まで接続できます。1台のスピーカーを接続する場合は簡単な配線で済みますが、多数のスピーカーを接続する場合、インピーダンスの設定が難しくなり、配線が複雑になります。長距離の配線敷設は不可能で、長くても20m程度の延長が限界になります。

狙った範囲だけをカバーするワンボックススピーカー、残響が多い空間でボーカル音声を拡声するのに適するラインアレイスピーカー、近距離に広く拡声するのに適する広指向性スピーカーなどを、用途に応じて選定し配置します。

スピーカー接続の注意点

ローインピーダンスのスピーカーをハイインピーダンス端子に接続すると、インピーダンス値が小さいことから、非常に大きな音がスピーカーから発生し、スピーカーのコイルが焼けたり、アンブの安全装置(主にヒューズ溶断)が働くか、アンプの内部回路が破壊されるなど、焼損事故に繋がります。

逆に、ローインピーダンス端子にハイインピーダンススピーカーを接続した場合、インピーダンス値が大きいため、音がほとんど発生しません。スピーカーの音量を大きくしてもあまり効果がなく、無理な増幅によって音が歪みます。

適正な端子に適正なスピーカーを接続することが原則ですから、機器の選定と接続には注意しましょう。

アッテネーターの計画方法

スピーカーの音量調整をする機器を、アッテネーターと呼びます。例えば、学校の教室で、壁に「OFF・1・2・3」というようなツマミ付きスイッチが付いています。他にも、事務所や休憩室など、スピーカーが設置されている室の壁面についていることが多いと考えられます。これがアッテネーターです。

アッテネーターは天井や壁に設置しているスピーカー本体に、内蔵することもできます。アッテネーター内蔵スピーカーを使用した場合、スピーカー個々に音量調節ができますので、天井高さや部屋の広さなどに合わせて、音量調節ができるようになり、放送品質の確保が容易になります。

ただし、頻繁にスピーカーの音量を変える場合や、会議室・事務室など、打ち合わせや会議によって放送設備を停止させたい要望がでることがありますので、スピーカー本体にアッテネーターが付いているのは不便です。このような環境の場合は、アッテネーターを壁付けとするのが望まれます。

緊急地震速報の非常放送利用

放送設備の中には、緊急地震速報を取り込み、緊急放送用とする機能を標準的に実装している製品もあります。すでに放送設備が設置されていて、交換できない場合でも、緊急地震速報を受信して放送設備側に渡すための受信機もありますので、これを導入する方法も考えられます。

事務所や工場など特定対象向けの場合、避難訓練などで緊急地震速報が流れることを周知しておけばパニックを引き起こす心配は低減されます。しかし、不特定多数が来場する施設などでは、緊急地震速報を自動放送してしまうことにより、パニックを引き起こすことが考えられます。このような状況が想定される場合、緊急地震速報を施設関係者だけに放送するなど、無用な混乱を引き起こさない工夫が望まれます。

以下、緊急地震速報の仕組みなど、基礎知識について解説します。

緊急地震速報とは

緊急地震速報とは、地震が発生した際に、地震発生場所の近くにある地震計によって捕捉したデータを、電話回線や衛星への信号伝送などを利用して、地震が到達する前に他の場所へ地震到達を知らせることが出来るシステムです。

身近で使用されている緊急地震速報では、テレビやラジオなどにデータを送信し、テレビやラジオを視聴しているユーザーに対して速報を行い、地震が発生する数秒の時間内に、心の準備をする、あらかじめ柱や家具を押さえる、机の下に避難するなどの行動を起こすことができます。

緊急地震速報による警報は、地震の発生を予測するシステムではなく、発生した地震を、地震波よりもスピードが速い方法で、伝送するシステムです。地震を予知するためのシステムではありませんので、正しく覚えておくことが大切です

地震波の速度と緊急地震速報の仕組み

地震が発生した場合、まずP波という縦揺れが約7km/sの速度で到達し、遅れてS波という大きな横揺れが約4km/sの速度で到達します。この伝搬速度の差を利用し、地震の発生場所で観測された情報を、周辺の観測所へ電波等を利用して送信することで、地震が到達する前に知らせる仕組みが緊急地震速報です。震源に近い場合、信号が到達と地震の到達が同時であったり、ほとんど差がないこともあります。

緊急地震速報は、高速運行している電車を地震到達前に停止させたり、稼働している工場等の生産ラインを停止させたりすることに使われており、地震が到達する前にシステムを自動的に停止することにより、被害の拡大を抑えています。

緊急地震速報の伝達の手順

震源に近い地震観測所で地震を記録すると、マグニチュードや震度について推測され、基準値以上の地震と判断され場合、緊急地震速報の信号が伝送されます。この時点では、信頼性が比較的良くありません。地震波が広がり、2箇所、3箇所と地震観測所での計測点が増え、多くの測定データが収集され、信頼度が向上していきます。

一般向け緊急地震速報

一般向けの緊急地震速報は、2箇所以上の地震観測所で測定された地震が、震度5弱以上の場合に発信されるようになっています。1箇所の地震観測所で記録されたデータでは、機器の故障や、落雷による影響などによる誤報の可能性があるため、2箇所以上の地震観測所のデータが必要とされています。

現在の緊急地震速報では、地震の広がりが非常に大きく、何秒以内に地震が到達するかを正確に発表することが難しいため、「何秒後に地震が来る」という数値は発表されず、まもなく地震がくるという言い方となっています。

一般向け緊急地震速報では、震度3以下と予測されていた地域が、震度3弱以上と予測された場合に、緊急地震速報の続報が発信されるようになっています。緊急地震速報の取り消しについては、落雷など、地震以外の事象によって発生した地震検知による誤報の場合に行われます。

高度利用者向け緊急地震速報

電気機器の自動制御などに緊急地震速報を利用するなど、高度な利用を行う場合の緊急地震速報は、一般向け緊急地震速報と違う伝達方式となっています。気象庁から発信される緊急地震速報は、地震発生から1分以内に約10回程度発信され、後に発信される地震速報ほど精度が高いものになります。もし緊急地震速報が誤報だった場合、キャンセル報が発信されます。これら一連の信号を利用し、何報目の信号を利用するか、キャンセル報の有無などを判断し、自動制御を行うことができます。

家庭内における緊急地震速報の活用

家庭で緊急地震速報を確認できる方法は、ほとんどがテレビによるものと思われます。緊急地震速報の放送が流れた際には、その数秒から数十秒後に大きな地震が来る事になりますから、転倒のおそれがある家具を押さえたり、机の下に避難したりすることが望まれます。

料理等をしていた場合、無理に火を止めにいくのはかえって危険です。ガスはマイコンメーターというガスメーターが地震検知によって自動ガス停止しますので、手動で火を消しに行かず、火元から離れ避難経路を確保することに努めるべきとされます。

マイコンメーターの他にも、電気ストーブなども地震の揺れを検知して機器を停止させるものがほとんどのため、地震で手元がおぼつかない状態で火気に近づくことよりも、自動消火する安全装置に頼り、自身は安全な場所へ避難することを考える方が望ましいと言えます。

なお、緊急地震速報は、テレビのニュース速報と同様なものですから、テレビのスイッチが自動的にオンになったり、ラジオのスイッチが自動的にオンになったりするものではありません。タイミングよくテレビを見ていたり、ラジオを聴いていた場合に、緊急地震速報を知ることができるものです。

テレビやラジオ以外にも、家庭内では携帯電話にメールが転送されるというものもあります。しかし、メールを受信するまで数秒を必要としますので、迅速性を求める緊急地震速報においては、事後に受信することもあります。

緊急地震速報を受信した場合、緊急地震速報のアラーム音が鳴ります。これはNHKのアラーム音で、ほとんど全ての放送局がこの音を使用しています。不協和音の連続により不快感を与える音階となっているため、聞いた人に対して強く気を引きます。緊急地震速報を館内一斉放送するような場合、このアラームを流すことが強く推奨されています。

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