避雷設備の設置基準と計画

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避雷針の機能と仕組み

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電気設備には、人、家畜、建築物、建築設備などを雷から保護するための避雷設備が含まれます。落雷を受け止める受雷部、雷電流を安全に伝達させるための電線、雷電流を大地に逃がすための接地極によって構成されており、落雷から建物を守っています。「落雷を受け止める受雷部」は避雷突針と呼ばれる部材が利用されており、これが通称として「避雷針」と呼ばれています。

避雷設備は雷を避けるために設置する設備ではありません。建物に落ちた雷撃を安全な通り道に誘導し、建築物や建築設備に悪影響を及ぼすこと無く大地に逃がすことによって、雷撃による損傷を最小限に抑え、人や電気設備を保護します。避雷設備があれば雷が落ちないということはなく、どこに落ちるかわからない状態を避け、雷を安全な通り道に誘導することで安全を確保するための設備です。

このように避雷設備は「落雷を避けるための設備」ではなく「落雷による被害を避けるための設備」です。適正に施工された避雷設備であれば、建物に落雷があったとしても、建物内部や屋上に設置されている設備類は、安全に保護されることになります。ただし雷撃は極めて高い電圧と電流を生み出すため、直撃を避けたとしても、誘導雷と呼ばれる異常電圧によって通信機器などに悪影響をおよぼすおそれがあるので注意が必要です。

なお避雷設備の設計・施工を行うメーカーには、エースライオン、ワールド避雷針、東京避雷針などがあります。避雷針設備を設置する計画がある場合、メーカーの協力を依頼するのが効率的です。

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落雷対策の基礎知識

落雷には、大気中で発生した雷が直接電気設備や機械設備に直撃する「直撃雷」と、雷電流が建物の内部に侵入し、金属部との電位差による絶縁破壊を引き起こす「誘導雷」があります。これらが引き起こすサージ電圧により、建築物の構造躯体が破壊されたり、建築設備に対して誘導障害が発生することがあるので、避雷設備を有効に設置し、雷から保護しなければいけません。

建築基準法における避雷設備

建築基準法で規定されている避雷設備の設置基準は、高さ20mを超える部分を保護することとされています。煙突や広告塔、高架水槽など、建築物の屋上に設けられる工作物や、自立工作物であっても適用されます。また避雷設備は、国土交通大臣が指定する工業規格に定める構造としなければならないとされていますので、JIS A 4201に規定された避雷設備を設置することになります。

JISに規定された避雷設備は、1992年度版と2003年度版があり、1992年度版は所定寸法確保または所定の施工方法を行うよう規定されており、2003年度版はIEC規格への整合として性能規定が規格指針となっています。

避雷設備の法的な設置基準

避雷設備は20mを超える建築物や工作物に設置義務がありますので、20mを超えなければ法的な設置義務は発生しません。極端な例ですが、高さ19.9mで建物を設計すれば、避雷設備による雷保護は法的に必要はありません。しかし、20mに満たない建物に落雷しないわけではありませんし、周囲に高い建物がない場合、5mや10mというような低い建築物でも落雷することがありますので、自主的に避雷設備を設ける必要が無いか、検討するのも重要です。

「煙突やアンテナなどの突起物がある場合」「多雷地区に建築物を計画する場合」「山や丘陵の頂上や頂上付近に建築物を計画する場合」などは、建物の高さが低くても落雷の可能性が高くなります。このような環境では、法的に避雷設備が不要でも、自主設置するのが安全です。

建築物の最高高さが20m未満であっても、建築物に支持された建築設備の一部分だけが20mを超えた場合でも、避雷設備で保護しなければいけません。例えば、建築物の屋上高さを18mで計画した場合、建物の屋上に高さ2mを超える空調機や受変電設備を設置することになると、設備機器の高さが20mを超えてしまうため、避雷設備によって落雷から保護しなければいけません。これは、建築基準法により「建築設備を落雷から保護しなければならない」ことから定められています。

他の建築物による落雷保護

高層ビルに囲まれた場所に低層の建物を新築する場合、周囲の建物に設けられた避雷設備によって、低層部分が保護されています。しかし、建築基準法では、他の建築物の保護範囲であっても、避雷設備を設置を設置するよう求めており、その周辺の高層建物の所有者が同一でない限り、避雷設備を免除することはできません。

これは、自身が所有していない建築物が永続的に建っている保証はないことや、他人所有の避雷設備からの保護を有効検証できないためです。自身が所有してているビルからの落雷保護でなあれば保護が認められますが、それ以外は周囲に対して低層であっても、20mを超過している限り避雷設備の設置義務が発生します。

なお、同一敷地に多数の建物を建築している場合であり、かつ全て自身の資産となる建築物であれば、避雷設備の共用が可能です。ただし、避雷設備を設けている建物を増改築・解体するような場合で、既存の避雷設備からの保護ができなくなった場合は、それぞれの建物に避雷設備を新設する義務が発生します。原則として、それぞれの建物ごとに避雷設備を設けるのが良いでしょう。

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高さ20m未満の避雷設備設置の判断

前述したように、高さが20m未満の建築物は避雷設備の設置義務がありません。しかし、20m未満であれば落雷が発生しないということはなく、周圍に建築物がなかったり、標高の高い山岳地帯であれば、低層の建築物や工作物であっても落雷の危険性があります。

国土交通省が監修している建築設備計画基準(旧)では、建築物に避雷設備を設置するか否かについて、下記表の指数が「40」以上となるかを基準に判断するという考え方がありましたので紹介します。

建築物の使用目的

民家・同程度のビル 2
外部にアンテナのある民家・同程度のビル 4
工場・作業場・研究所 6
事務所・ホテル・集合住宅 7
教会・ホール・劇場・博物館・デパート・郵便局・駅・空港・競技場 8
学校・病院・老人ホーム 10

建築物の構造

金属以外の屋根で、金属枠で周囲を囲ったもの 1
金属以外の屋根で、鉄筋コンクリート造 2
金属・草葺以外の屋根で、煉瓦・コンクリート・石造 4
金属屋根で、金属枠で囲ったもの、または鉄筋コンクリート造 5
金属・草葺以外の屋根で、材木枠または壁 7
材木枠の金属屋根で、煉瓦・コンクリート・石造 8
草葺屋根 10

建築物の内容物

重要物や引火物を含まない普通住宅・事務所・工場・作業場 2
引火物を含む工業・農業用建築物 5
変電所・ガス工場・電話局・放送局 6
工業重要施設・古代記念建造物・歴史的建造物・博物館・美術館 8
学校・病院・老人ホーム 10

建築物の孤立の程度

同じ程度の高さの建築物・樹木が広い範囲で存在 2
周囲に同じ程度の高さの建築物・樹木が2~3本存在 5
完全に孤立・周囲建築物や樹木の2倍を超える高さ 10

地形

平坦な地方 2
丘陵地帯 5
標高300~900mの山岳地帯 8
標高900mを超える山岳地帯 10

建築物の高さ

9m以下 2
9mを超え15m未満 4
15mを超え20m未満 5
20m以上 40

例えば、「丘陵地帯において、金属屋根以外の鉄筋コンクリート造、重要物保管なし、周囲に高い建築物が広い範囲で存在する、高さ18mの事務所ビル」を考えた場合、「使用目的 : 7」「構造 : 2」「用途 : 2」「孤立 : 2」「地形 : 5」「建築物高さ : 5」となり、合計値は「23」となりますので、この建築物には避雷設備は不要であると判断できます。

雷保護の計画基準は年々新しくなっており、現在では保護レベルの検討に際しては、建物の面積や落雷密度、地域性などから落雷回数を算出し、必要な保護レベルを算出するという方法も活用されています。

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消防法における避雷設備

消防法における避雷設備は、指定数量以上の危険物を扱う製造所、貯蔵所、取扱所に規定されており、指定数量の10倍以上の製造所には避雷設備を設けることが定められています。消防法には「周囲の状況によって安全上支障がない場合はこの限りではない」というただし書きがありますが、原則として建物本体で完結するよう計画すると良いでしょう。

危険物の製造所だけでなく、指定数量の10倍以上を取り扱う貯蔵所や、屋外タンク貯蔵所も、同様に避雷設備の計画が求められます。

火薬取締法における避雷設備

火薬取締法施行規則では、地上に設置する一般火薬庫には避雷設備を設けることと定められています。避雷設備の位置や形式、構造などは、経済産業大臣が告示で定めるものとしなければならないと規定されており、これも建物高さによらず避雷設備が必要となる規定のひとつです。

新JISによる避雷設備の設計

2003年、通称「新JIS」と呼ばれる避雷設備の新規格が制定され、広く採用が進められています。新JIS方式による避雷設備は、外壁への落雷を防止する内容が規定されているため、超高層建築物では外壁デザインなどに大きな影響を及ぼすおそれがあります。既存の避雷設備は旧式のJISを基準としたものであり、これを新JIS方式に改修するのが困難なため、現在では旧JISによる避雷設備と、新JISによる避雷設備の二種類を、設計者が選択できるような規定となっています。

旧JIS方式の避雷設備は、避雷突針や避雷導体の先端から、角度60度の斜線を引いた範囲の内側が保護されているという規定です。危険物取扱所においては安全基準が厳しくなり、45度の斜線を引いた角度が保護角となります。1992年制定の旧JIS方式では、60度と45度の2種類が保護角として定められています。

対して新JIS方式では、建築物の高さによって保護角が細かく規定されており、建築物の高さが高いほど、保護角を小さく規定することで安全性を高めています。

建築基準法上では、旧JISによる避雷設備と新JISによる避雷設備の、どちらを採用しても良いことになっていますので、設計者の判断により使い分けることが可能です。ただし新JIS方式と旧JIS方式を混在させるのは禁止されています。なおコスト面では、新JISによる避雷設備の方が割高と言われていますが、統合接地などを活用し、接地極などを省略し合理化すれば、コスト差を縮める事が可能です。

市区町村別には規定されている火災予防条例などによっては、新JISによる避雷設備を適用するように規定・指導される場合がありますので、建物を建築する地域によって、各種条例の確認が必要になります。

回転球体法による落雷保護

新JIS方式では「回転球体法」と呼ばれる保護方式が定められています。回転球体法は「避雷針や避雷導体の先端を、所定の半径の円で結んだ部分だけが保護されている」という考え方に基づき、避雷設備の頂部同士を結ぶ所定の大きさの円を描き、全ての方向において円の内側に建築物が入るよう計画します。

超高層建築物及び工作物の側雷保護

新JIS方式では、建物頂部への雷撃の保護だけでなく、超高層建築物における側雷(建築物の中層部の壁に落雷すること)に対する保護についても規定されています。

数百メートルに及ぶ超高層建築物では、建築物の外壁に対して落雷するおそれがあり、旧JISではこれを保護する規定はありませんでした。これに対応するため新JISでは、側壁への落雷保護を行うため、壁に垂直方向の受雷部を設置する必要があります。

高さ60mを超える建築物で新JIS方式を採用する場合、最もレベルの低い「レベルⅣ」に準拠しても、側壁への落雷保護が必要となります。側壁への落雷保護は、外壁に対してメッシュ状に金属体を敷設しなければならないことから、超高層建築物で新JIS方式による避雷設備を採用するのは、意匠的に困難であるのが現状です。

しかし、例えば危険物取扱所などは、所轄の消防機関の規定により新JIS方式を採用しなければならないと定められている場合があるため、外壁保護を考えなければならない場面もあります。

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外部雷保護の考え方

外部雷の対策としては、雷を早期に補足し、発生した雷電流を大地に安全に放流する方法が、保護方法として一般的です。受雷部を屋上や屋根部に設置し、雷撃は引下導体によって大地に送られ、接地極によって大地に拡散します。

受雷部は、回転球体法や保護角法、メッシュ法など、選定した避雷手法に基づいて、受雷部の位置や高さを計画します。従来はほとんどが保護角法とメッシュ法による設計でしたが、新JISが普及しはじめ、保護角法と回転球体法を組み合わせた設計事例が多くなっています。

旧JISと比較し、保護角度による設計は厳しくなっており、高さ20m以下は55度、30m以下は45度と、旧JISにおける危険物取扱所と同等の保護性能となっています。高さ60mにもなると、保護角は25度と極めて狭くなり、現実的には回転球体法を使用しなければ建築物全体を保護するのは困難です。

引下導体は、建物全体がメッシュ状になるよう、保護レベルに応じてループ状に回すよう計画します。旧JISでも広く使われていた手法であり、棟上導体をメッシュ状に敷設することで落雷から保護します。採用する保護レベルによってメッシュのピッチが定められており、最もレベルの低い「レベルⅣ」では20m×20mのメッシュを構成すれば保護可能とされます。これは旧JISに類似した保護方法です。

しかし保護レベルを上げるごとに5mずつメッシュ幅を小さくしなければならず、もっとも保護レベルの高い「レベルⅠ」では5m×5mのメッシュ構築が求められます。

構築したメッシュは引下導体を用いて大地に接続することとなりますが、鉄骨造の場合は構造躯体の鉄骨に接続することで代替可能です。鉄筋コンクリートの建築物であれば、鉄筋に導体を接続することで代替が可能ですが、鉄筋相互に電気的接続が確保されているか確認が必要です。一般的に、機械式継手と呼ばれる鉄筋相互の接続方法では、電気的導通が確保されていませんので使用不可とされています。

接地極は個別接地や、構造体を利用した接地など、適した方法を設計者が選択します。個別接地を行う場合は、銅板を縦向きに地中埋設するとより効率良く大地に対して雷電流を逃がすことが可能です。導体として建築物の構造体を利用すると、極めて小さな接地抵抗値を得ることができるため、これも雷電流を逃がすのに有利になります。この場合、杭など地中深くまで埋設するものに接地することが可能であれば、より低い接地抵抗値を得られます。

内部雷保護の考え方

建物内部に侵入した雷電流は、電位差があれば放電を発生させます。電源線や通信線から建物内部に雷電流が侵入し、電気設備を破壊することがあるため、内部雷保護が重要になります。内部雷から設備を保護するためには、サージ保護デバイス(SPD)を電源線・通信線に敷設する方法や、等電位ボンディングによって金属体同士の電位差を同じにし、放電を防止する方法があります。

等電位ボンディングは、給水管・排水管・ガス管・電線管など、金属で出来ている物体を接地線に接続し、電位を一定に保つ技術です。電源線や通信線では、全ての配線にSPDを設けることが理想ですが、コスト高が非常に高くなりますので、受変電設備や通信機械室など、特に重要な設備系統に、SPDを設ける方法も考えられます。

避雷設備の設計における注意点

避雷突針の選定

避雷突針を選定する場合、全長は長過ぎないようにします。長過ぎる突針は風による振動音を躯体に伝搬させ、下階に居住する人に、不快音や振動公害を与えることになります。6m以上の長さを持つ突針では、風などによる突針の揺れが共振し、大きな振動が発生する可能性が高くなります。

避雷突針の設置方法は、基礎に設置する方法と、ハト小屋やペントハウスの側壁に設置する方法があります。大きなハト小屋が設置されていれば、ハト小屋のコンクリート面を使って側壁設置できます。ALCに避雷突針を支持させることは困難ですから、必ず内部の鉄骨やコンクリート躯体に、強固な支持を取ることが重要です。

棟上げ導体の選定

棟上げ導体は、パラペットやフェンスに設置する受雷部として代表的な部材です。アルミと銅の二種類がありますが、設計者の判断で使い分けます。筆者の設計方法では、アルミ笠木やフェンスに棟上げ導体を設ける場合、銅にすると雨による緑錆や汚れの原因になるので、アルミ製の棟上げ導体を採用するのが基本です。アルミは銅に比べて、電線サイズが大きくなりますが、汚れに強いという特徴があります。

パラペットやフェンスに棟上げ導体を設置する場合、旧JIS方式または新JIS方式でレベルⅣの設計であれば、棟上げ導体から直線距離で10mまでを保護範囲としてメッシュを構成します。棟上げ導体の水平断面よりも高い位置の保護はできません。例えば、パラペットに棟上げ導体を設けた場合、その水平高さよりも突出する建築設備などは保護範囲外となります。通気管などが突出する場合、特に注意が必要です。

引き下げ導線の選定

引き下げ導線は、突針や棟上げ導体と接地極を結ぶ導線です。前述したように、汚れを気にするならばアルミ製の引き下げ導線を採用すると良いでしょう。建物構造が鉄骨造であれば、鉄骨に溶接することで引き下げ導体として代替可能です。

この場合、鉄骨に対して現場溶接するのは極力避けるのが望まれます。工場以外での鉄骨溶接は、鉄骨の強度を定価させる原因となりますので、鉄骨工場で現場溶接用のプレートを取り付けてもらい、そのプレートに対して溶接するよう調整します。鉄骨は熱に弱く、導体の現場溶接を行うと熱によって鉄骨の強度低下を引き起こすことがあります。あらかじめ、構造設計者と調整することが望まれます。

接地極の選定

接地極は、避雷針への落雷を大地に流すため地面に埋め込む導体です。600~900mm角の銅板を地面に埋めて、大地と避雷設備を接続する役割を持っています。

接地極は建築物の下部にならないよう計画するのが原則で、接地極の故障や、接地抵抗値不足が発生した際の修理が容易に行えるよう配慮します。狭い敷地いっぱいに建築物が建てられるような場合、銅板では埋設が困難なことがあります。このような条件下では、14φ×1500Lの銅棒による接地極を地面に打ち込んで対応します。

避雷設備として確保しなければならない接地抵抗値は、単独抵抗値で50Ω以下、総合抵抗値で10Ω以下の接地抵抗値が確保できるよう埋設します。やむを得ず接地極が建物下部になってしまう場合、接地極が故障した場合の代替案を事前に検討しておきます。予備の接地極を埋設するのも良いでしょう。

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