セキュリティ・入退室管理・防犯設備の基礎知識

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セキュリティ・防犯設備の概要

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防犯設備は、所定の敷地内、区画内、建物内や室内に無許可で侵入しようとする人、車両などを検知し、警報で威嚇したり、警備会社や警察機関に通報を行う設備を総称する。

防犯設備を計画する場合、関連するシステム機器をすべて自営で購入して管理する方法と、機器を含む警備システムを外部委託する方法が一般的である。

入退室管理設備や警備設備を全て購入し、施設設備として管理する場合、設備員や警備員が設備管理を行う。外部委託の場合、管理コストは外部委託業者への支払いに当てる。

自営で防犯設備を設置する場合

一式自営で防犯設備を設置する場合、その運用や保守は全て自社管理で行う。長期間運用し、警備システムや入退室管理設備が古くなり陳腐化した場合や、カメラやカードリーダーが故障した際の設備更新を含めて、設置者が全ての管理を行う。

大規模施設や、機密などが含まれる施設では、全ての設備管理を自社で行い、警備システムを外部委託せず自衛で管理する事例もある。全ての機器を設置し、施設全体の警備システムを構築する。

警備会社に委託する場合

警備会社に防犯設備一式を委託する方法では、建物側の対応は警備配線用の配管ルートの構築、電源の提供のみを行う。

電気錠やカードリーダー、ITVカメラの想定位置に対し、電源と空配管を敷設し、建物完成後に警備会社が防犯機器を設置する。

防犯設備を警備会社に委託した場合、設置する際のイニシャルコストを電源と空配管のみに留め、月々または年間契約によるランニングコストで、防犯機器の設置費を償却していく。

機器類のメンテナンスなどは警備会社が一括して行うため、運用コストを軽減できる。設置した警備システムが発報した場合、警備会社のガードセンターから警備員が駆けつける契約もあり、緊急時の安心感も高まる。

自営で設置する方法、警備会社に委託する方法、どちらもメリット・デメリットがあるが、設置する建築物の特性に応じて選定する必要があり、施主側の意向に大きく左右されるため綿密な打ち合わせが重要である。

防犯設備の機器構成

防犯設備は、電気錠、パッシブセンサー、アクティブセンサー、カードリーダーなど各種警備用の機器を組み合わせ、必要な場所にセキュリティ機能を提供する。

センサー端末を建物入口やガラス窓付近に設置して侵入者検知を行い、警備状態となっている場合には発報によって威嚇や警報を行う。防犯設備の機器構成としては「電気錠」「センサー」「監視盤」「威嚇装置」「通報装置」などで構成される。

センサーで検出した侵入情報は、監視盤に信号情報として送信され、威嚇装置を動作させ、警報装置に表示する。必要に応じて、外部委託している警備会社のセンター装置にも警報情報が送信され、警備員の呼び出しといった対応も可能。

電気錠

電気錠は、遠隔で扉の施錠ができる錠前のひとつで、タイムスケジュールによる自動開閉のほか、カードリーダーを通したり、テンキー入力による開閉など、外部信号に対応して鍵の施錠と解錠を行う。

テンキーパスワードを知らない人、カードリーダーを持たない人は、電気錠によって施錠された扉を開閉できない。無理に扉をこじあけたり合鍵で開放すると、異常解錠として信号が送信され、監視盤に表示する動作を登録できる。

カードリーダー

カードリーダーを入退室管理設備に組み込む場合、カードごとにセキュリティレベルを設定できるため、カードに記録された入室レベルが低い人は、重要な部屋に入室できないといった制限が可能。

荷物の搬入を行う業者に対して、搬入用のカードを配布すれば、エレベーターや駐車場のみに入場でき、重要な部屋への入室を制限するといった運用が可能。

電気錠を用いた制御では、タイムスケジュール、パスワード入力やカードリーダー操作のアクションに対し、電気錠が施錠・解錠といった一定の動作を行う。電気錠を制御する中央制御機器では、いつ、どの扉に解錠・施錠の動作が指令されたか記録する。

施錠・解錠が行われた時間、カードリーダーが接触した時間、カードリーダーのID番号や登録者の名前などが全て記録されるため、もし事件や事故が発生した場合は、操作履歴を確認し、事故原因を探索できる。

パッシブセンサー

パッシブセンサーは、人体から発生する赤外線を受信し、周辺と人体の赤外線量の差を検出して警報を発する警備機器である。比較的広い範囲を警戒でき、窓ガラスやガラスドアの前に設置しておき、室内に入り込んだ人を感知するように配置するのが一般的である。

パッシブセンサーの形状は、一般的に白色の半円ドーム型となる。人が近づくことで人体から放出される赤外線を検出すると、本体の内蔵ランプが赤く光る。

パッシブセンサー本体は受動的に動作する設備で、自らが赤外線を発信することはない。人体から発生する赤外線を受信することで動作するため「パッシブ」という名称が付けられている。遠赤外線を検出する機構のため、分解能が低く、小さな物体や高速移動する物体の検出には適していない。

アクティブセンサー

本体から赤外線ビームを放出し、赤外線が遮られたことを検出することで、警報を発する警備機器である。敷地境界の付近や、門扉の背面に設置し、乗り越えや破壊によって侵入した人、車両などを検出する。

赤外線ビームが遮られることを検出するので、人体にかかわらず物体全てを検知する。落ち葉、鳥、新聞紙、のほか、犬猫が通り過ぎることでも検知し、警報が発せられるので、誤報が多いという欠点がある。

近赤外線が利用されており、分解能が高いため高速移動する物体の検出ができる。欠点として、枯葉などが強風で舞い、赤外線が遮られてしまうことによる誤検出も多く、設置場所は慎重に選定しなければならない。

マグネットセンサー

マグネットセンサーは、開口部の警備の基本となる装置である。窓や扉が閉鎖した状態で磁石が正対するよう配置し、窓を開けたり扉を開くなど、2つの磁石の接触が外れた瞬間に警報を発する。

マグネット部分とスイッチ部分が接触している時は、通電状態となり警備状態が維持される。窓が開けられたり、扉が開けられた瞬間にセンサー相互の接触が外れると、回路の導通が失われる。この導通の喪失を「こじあけ」として検出し、監視盤に警報を発する。

マグネットセンサーは安価で小型で、形状が目立ちにくいという利点があり、かつ警備対象の扉に配管を敷設する必要がないため、後付けも容易である。窓や扉の警戒装置として、広く利用されている。

ガラス破壊センサー

ガラスの損壊を検知し、警報を発する警備機器である。ガラスが破壊された時に発生する振動を検出する接触型と、ガラスが破壊された音を検出する非接触型がある。

接触型のガラス破壊センサーでは、ガラスの破壊には固有の振動周波数があるため、この周波数を効率良く検出して警報を発する。トラックなどが付近を通過したり、窓を叩く程度の振動では発報しないよう配慮されている。

カーブガラスや合わせガラス、強化ガラスなど、特殊加工を施したガラスの場合、振動がセンサーで受信できないことがある。適正に検出できるガラスか確認するのが重要である。

非接触型センサーでは、ガラス破壊時の特有周波数を検知して警報を発する。ガラス面ではなく近辺の天井面にセンサーを設置するので、美観を損なうおそれが少ないという利点がある。

ガラス前面にブラインドやカーテンが下ろされると、破壊音が遮蔽されてガラス破壊センサーが検知しない場合がある。ブラインドやカーテンよりも、窓ガラス側にセンサーを設置すると良い。

カードリーダーの種類

カードリーダーには、接触式と非接触式の二種類がある。磁気情報が記録されたカードを端末装置に通して認証を行うものや、ICチップを接触させるものがある。

接触式のカードでは、カードリーダーに通すたびにパスケースや財布などからカードを取り出す手間を要すため、複数回のカード認証が必要な場所では動作が煩雑になり、通行に時間が掛かるなど、問題である。

非接触式のカードを用いれば、パスケースからカードを取り出すこと無く認証が行える。カードリーダーの感度は、ほぼ密着させて認証しなければならない低感度なものから、1cm程度まで近接させれば認証する高感度の製品、カードキーを首から下げたまま、手をかざす事無く認証できるハンズフリーの製品など、用途に応じた方式がある。

工場では、両手がふさがっていても、首にかけたストラップで認識できる製品が求められる場合があり、用途に応じた計画を行う。

Felica方式

非接触方式のカードリーダーの認証方式は、Felica(フェリカ)が代表的である。Felica方式は、SuicaやPASMOといった交通系ICカードのほか、Edyなど電子マネーの分野でも採用されている。利便性が高く、スピーディーな認証を可能にしている。

ソニーが開発した日本独自の通信規格であり、反応速度が速く、セキュリティが強固であるという特徴を持ち、日本国内の鉄道網など、処理速度とセキュリティ性が高レベルで求められる用途で普及が始まり、国内で爆発的に普及した。

携帯電話への組込みも行われており「おサイフケータイ」という名称で、携帯電話やスマートフォン端末にICチップを埋め込み、交通ICカードと同様に利用したり「Suica」や「EDY」といった、電子マネーとして利用することも可能。現金を扱うことから、高いセキュリティ性が求められるが、ここでも「セキュリティが強固」という利点が活かされている。

Felica規格のICチップは、通信機器のMACアドレスのように「IDm」と呼ばれる固有の番号が割り当てられている。16桁の固有番号であり、同じ数字が存在しないよう管理されているので、IDmを個人に割り当てれば、扉を開けたり、出勤管理を行うのが可能。

IDmは容易に取り扱える一方、セキュリティ性が低いため、IDmだけを用いての「高い秘匿性を求められる」使い方は推奨されていない。IDが暗号化されていなければ、偽造による被害のおそれもあり注意が必要である。

Mifare方式

Mifareは「マイフェア」と呼ぶ無線通信規格で、Felicaと並んで、非接触カードによる入退室管理設備の通信規格として広く普及している。日本国内の公共交通システムはFelicaが使われているが、国外ではMifareによるシステム構築をしている場合が多く、入退室管理の通信規格の双璧となる。

Mifareは「NXP Semiconductors」が開発した通信規格で、Felicaと比べ、カードとカードリーダーの通信距離が短く、処理速度が遅いという欠点があり、国内では交通系ICの普及がFelica一色であったため国内ではほとんど普及していない。

しかし、価格が安価であり、かつ国外での実績が極めて多いということから、ビルの入退室管理設備やタイムカードなど、厳しい即応性を必要としない分野で、国内でも利用されるようになった。

Felicaと同じように、MifareでもICチップごとの固有ID管理が行われている。固有IDは「UID」と呼ばれており、Felicaの「IDm」と同じように、同一IDが存在しないように管理されている。

マルチカードリーダー

Felica、Mifareのどちらのカードも読み取りができるカードリーダーは「マルチカードリーダー」と呼ばれている。オフィスビルの入退室管理設備を計画する場合、マルチカードリーダーを採用しておけば、複数のカードが混在しても成立する汎用性の高い入退室システムが構築できる。

特徴として、カードリーダーの読み取り性能に違いがあり、Felicaはカードリーダーとカードの離隔は4cm程度でも読み取りができるが、Mifareは2~2.5cmまで近づけなければ反応しない。

生体認証による本人確認

カードを使用して入室管理を行う場合、カードリーダーを設置した扉や、セキュリティゲートを通過した人が本人かを判別できない。ITVカメラを併設し、本人かを録画する方法もあるが、効率的ではない。本人認証を行う技術として、指紋や声紋、顔などを判別する生体認証システムがある。

指紋認証

指紋認証は、個人を認証する方式として非常に一般的な方式で、指の皮膚部にある指紋の形状を読み取り、本人確認を行う方式である。指紋読取装置に指をかざし、登録したパターンに一致するかを判断する。

指紋は固有のものであり、歳を経ても変化しないため、長期に渡る個人判別方式として信頼性が高いという利点がある。指紋は人それぞれ違った形なので、誤認識によるエラーもほとんど発生しない。

指紋の形状によって個人を認識する方法であり、指紋を模った複製によって解錠されるおそれがある。セキュリティ精度を高める場合、静脈認証など「血管の生体情報を読み取る」方式もある。

静脈認証

指紋認証と似た方式であるが、指や手のひらの血管の形状を読み取って本人確認を行う。赤外線を照射して静脈のパターンを分析する方式が採用されており、高い認証制度を持つ。

指紋認証と同様、個体によって形状が違う「静脈」の生体情報を読み取る方式であるが、複製が困難という利点がある。

顔認証

顔の形状をスキャンし、形状解析によって認証を行う。写真撮影によって顔情報を取込み、登録パターンとの一致によって認識を行う。顔情報を平面的に捉える方式では、双子の場合に誤認識し、セキュリティを解除してしまうことがある。平面形状のみではなく、骨格なども含めて立体的に認証を行う「3D顔認証」という技術もある。

3D顔認証システムでは、顔の3D形状まで精密にスキャンすることで、高い精度を確保する個人認証方式である。誤認識率が非常に低く、複製も困難とされているが、システムを構築するコストは高価である。

虹彩認証

眼球の虹彩パターンを認証に使用する方法で、黒目の濃淡パターンによって個人を認識する。眼球の虹彩は個々に差があり、これも指紋と同様に経年で変化しないため、高い認識率を持つ。

平面情報のみを利用する顔認証では、双子の個別認識に難があるが、虹彩認証では双子の差も正確に認証できる。

防犯設備と防災設備の相反関係

防犯設備は、外部からの侵入を防止することを主目的としている設備であり、防災設備と相反する関係にある。火災などが発生した場合、消防隊は外部から建物内部に進入して消火活動を行う。一時的にセキュリティ機能を全て解除し、消防隊が容易に進入できる状態にしなければならない。

建物内部に残された人は、できる限り早期に建物から避難しなければならない。セキュリティによって避難が阻害されてはならないため、セキュリティは全て解除するのが原則である。

「防犯」と「防災」は相反する関係となるが、火災時は避難と救助が最優先されるため、計画には十分な注意を払う必要がある。

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